糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント

第26回 経口血糖降下薬配合剤の現状と注意点

加藤光敏 先生(加藤内科クリニック院長)

筆者について

初出:医療スタッフのための『糖尿病情報BOX&Net.』No. 52(2017年4月1日号)

はじめに

 糖尿病は初期ならば、単一の薬剤で良好なコントロールが得られますが罹病期間が長いと単一では難しくなります。さらに糖尿病の病態にはインスリン分泌不全と、インスリン抵抗性が関与し、薬物は各々改善する機序のものを組み合わせることが増えます。結果としてどうしても薬剤数が増え高齢者のポリファーマシーの問題にもつながります。

日本は糖尿病治療薬配合剤の歴史は浅い

 合剤があれば服薬数は減ります。海外では以前よりFDC(Fixed-Dose Combination:用量固定配合剤)が広く使用されています。日本は配合剤後進国とも言えますが、なぜ遅れたのでしょうか? 各薬剤は臨床試験が終了し販売されていても、日本では配合剤の新たな治験を求められるのが一因と考えます。その上、再度治験をしても、配合剤の特許は10年の通常と異なり、短めに定められているのも一因と考えられます。
 配合剤は2005年の改定で「①患者の利便性の向上に明らかに資するもの②その他配合意義に科学的合理性が認められるもの」という二項目が追加されやっと配合剤開発着手が始まりました(文献1)。

日本の先駆的降圧薬配合剤と糖尿病治療配合剤

 日本における配合剤は降圧薬が先駆です。日本初のARBロサルタンカリウムと、利尿降圧薬ヒドロクロロチアジドの合剤が発売されたのが、2006年12月です。2017年3月に調べたところでは、降圧薬と脂質異常症治療薬との合剤を含め、3種の合剤ミカトリオⓇ配合錠まで、15種、28製品と多数発売されています。合剤は費用対効果に優れることが検証されています(文献2)。
 これに対し糖尿病領域では初めての合剤の発売が2010年7月で、現在でも6種10製品に過ぎません。配合剤の特徴は必ず機序の異なる薬剤が用いられ、さらに純正品使用よりも1〜2割薬価が低くなっていることで、患者負担が減少し医療経済的にも有利です(文献3)。

現在発売されている糖尿病関連配合剤の特徴

 配合剤の内容を発売順に紹介しますが、アンダーラインは薬剤名の由来です。
①【メタクトⓇ配合錠LDとHD】メトホルミン500mgと、LDはピオグリタゾン(アクトスⓇ)5mg、HDはピオグリタゾン30mgで1日1回服用です。インスリン抵抗性改善に主眼が置かれた合剤ですが、メトホルミンの用量は少なめです。
②【ソニアスⓇ配合錠LDとHD】本配合剤LDはグリメピリド1mgとピオグリタゾン15mg、HDはグリメピリド3mgとピオグリタゾン30mgで朝1回服用です。SU薬のため低血糖の注意が必要です。特にLDからHDにアップする時には、グリメピリドが一気に3mgの高用量となることを忘れてはいけません。また両薬剤は体重増加を来しやすい薬に分類されるので注意が必要です。
③【グルベスⓇ配合錠】ミチグリニド(グルファストⓇ)10mgとボグリボース0.2mgの合剤で、1日3回食直前服用です。低血糖に注意とされていますが、その頻度は少ないでしょう。インスリン分泌の遅延をミチグリニドで改善し、ボグリボースで糖吸収を遅くし、両者マッチングを図っています。
 以下は、合剤単独では低血糖をほぼ心配しなくて良い合剤です。
④【リオベルⓇ配合錠LDとHD】DPP-4阻害薬アログリプチン(ネシーナⓇ)25mgと、ピオグリタゾンLDは15mg、HDは30mgです。ピオグリタゾンでの体重増加などの副作用をアログリプチンが軽減することが期待されます。
⑤【エクメットⓇ配合錠LDとHD】ビルダグリプチン(エクアⓇ)50mgと、メトホルミンLDは250mg、HDは500mgの合剤で1日2回朝夕服用の薬です。なおメトホルミンは中枢性の食欲抑制作用が明らかになりました。当院ではメトホルミンやその合剤を無理がなければ食前服用としています。
⑥【イニシンクⓇ配合錠】アログリプチン(ネシーナⓇ)25mgとメトホルミン500mgの合剤で、1日1回の服用です。

配合剤処方時の注意点

 処方においては、各々の薬剤の性質を考えることは当然です。特に配合剤では「低血糖」の起こりうることを忘れやすく、注意が必要です。
 次に保険の適応については、その前の処方箋には合剤の薬剤のうち両方または、どちらかが処方されている必要があります。紹介患者で最初から合剤を出す場合には「前医処方に準じて使用」とレセプトに記載する必要があると考えます。
 配合剤のネーミングは処方の誤りを防ぐために重要です。「メタクト」ならばメトホル ミンとアクトスと、一度で覚えられます。しかしリオベルのようなLion, Novel(画期的な)がイメージでのネーミングは処方する薬剤が何の配合剤だったか、確認する作業が必要になります。各メーカーには今後ともヒューマンエラーを最小限にする薬剤名をお願いしたいと考えます。

参考文献

  • 1) 加来浩平.糖尿病の最新治療 Vol.6, No3, p144-149, 2015
  • 2) 齋藤郁夫.診断と治療 Vol.101, No3, p453-458, 2013
  • 3) 太田明雄.糖尿病の最新治療 Vol.6, No3, p112-117, 2015

※記事内容、プロフィール等は発行当時のものです。ご留意ください。

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