よりよい糖尿病看護を目指して

Vol.1 ご存じですか?「クリニカル イナーシャ」

関東労災病院 糖尿病・内分泌内科 部長 浜野 久美子 先生
筆者について

「クリニカル イナーシャ(Clinical Inertia)」という言葉をご存じでしょうか?
「臨床的惰性」などとも訳され、最近、よく耳にするようになりました。
患者さんが治療目標に達していないのに、適切な治療が行われていない状態を意味します。
糖尿病の領域に限らず、医療全体が抱える課題の一つです。

身近に潜むクリニカル イナーシャ。
看護師の「観察眼」を生かして改善を

 糖尿病治療における「クリニカル イナーシャ」とは、どんなことを言うのでしょうか。たとえば、患者さんがインスリン注射療法への移行を強固に拒否された場合。「もっと食事療法をがんばるから」という患者さんの意思を尊重して医師がインスリン治療を先送りにするといったケースがあります。お薬も「きちんと飲んでる」という患者さんを真っ向から否定するわけにはいかず、いつも通りの処方を続けることがあるかもしれません。しかし、患者さんを慮るあまり血糖コントロールが悪化してしまっては本末転倒です。
 そこで頼りになるのが、看護師の皆さんの「観察眼」です。患者さんがインスリン注射を嫌がる本当の理由は何なのか、人前で注射をするのが恥ずかしいのか、痛みが怖いのか、それとも金銭的な問題か、そうした患者さんの本当の気持ち=インサイトを、患者さんを観察したり、患者さんと対話する中で探っていただきたいのです。

患者さんの本当の気持ちがわかれば
取るべき対応が変わることも

 金銭的な負担が心配な患者さんに、いくらインスリン注射が大事だと訴えても響きません。実際にどれくらい薬代が増えるのか一緒に計算してみることが大切でしょう。また、「きちんと飲んでる」という患者さんが、実は、薬の種類が多いために、服用方法を誤っていたというケースもあります。薬の整理方法を提案したり、配合薬への変更も改善方法の一つかもしれません。
 このように患者さんのインサイトがわかれば、対処も変わります。その結果、患者さんは適切な治療が受けられるようになります。
 皆さんの現場に「クリニカル イナーシャ」が潜んでいないか、ぜひ一度検証してみてください。どういった患者さんには、どういったアプローチが良いのか、医師も含めて、ケーススタディを皆で持ち寄る機会があるといいですね。

2021年01月19日
老化細胞を選択的に除去する「GLS1阻害剤」 糖尿病・動脈硬化症・NASHの症状を改善 新たな抗加齢療法を開発 東大医科学研究所
2021年01月19日
スタチンに対する効果が減弱している症例で心不全リスクが増加 スタチンによるコレステロール低下作用が乏しい症例は15.2% 国循が調査
2021年01月15日
SGLT2阻害薬を使用中にCOVID-19に罹患 正常血糖糖尿病ケトアシドーシス(DKA)を発症した症例 米国内分泌学会
2021年01月13日
【新型コロナ】ワクチンの利益とリスク 正しく評価し、接種の判断を 日本感染症学会が提言「ゼロリスクはありえない」
2021年01月13日
【新型コロナ】医療現場での感染リスクと予防効果を解明 医療従事者への感染を防ぐために 近畿大学
2021年01月13日
電解水素水が酸化ストレスと炎症を抑制する可能性 ラットのストレス負荷に対する生体応答を調査 理研と日本トリム
2021年01月12日
脳への糖の取込みを促進すると、加齢によるATP減少や運動機能低下を抑制できる 食事療法を組合せるとさらに効果
2021年01月07日
【新型コロナ】2型糖尿病患者がコロナ禍で受診を控え血糖コントロールが悪化 J-DOMEの症例データを分析 日本医師会
2021年01月07日
【新型コロナ】日本糖尿病学会と日本糖尿病協会が患者向け声明を公表「患者と医師・医療従事者が連携をとり、困難な時期を乗り切ろう」
2021年01月07日
血糖・血圧管理で心血管系自律神経障害リスクが低下――ACCORD研究
糖尿病プラクティス